「わたしの穴 美術の穴」

My Hole: Hole in Art

 

@Space23℃

 

石井友人    Tomohito Ishii

榎倉冴香    Saeka Enokura

地主麻衣子    Maiko Jinushi

高石晃    Akira Takaishi

桝田倫広    Tomohiro Masuda

 

会期:201543日(金)ー4月26日(日) 

  

 

石井友人・榎倉冴香・高石晃・桝田倫広, 「わたしの穴 美術の穴」,  DVD,  2015
石井友人・榎倉冴香・高石晃・桝田倫広, 「わたしの穴 美術の穴」, DVD, 2015
石井友人, 「多摩丘陵 上空写真」, L版写真15枚, 2015
石井友人, 「多摩丘陵 上空写真」, L版写真15枚, 2015
石井友人「Sub image (hole)」, 116.5x91cm , oil on canvas, 2015
石井友人「Sub image (hole)」, 116.5x91cm , oil on canvas, 2015
石井友人, 「多摩丘陵にて」, DVD, 15分, 2015
石井友人, 「多摩丘陵にて」, DVD, 15分, 2015
榎倉冴香, 「2015年 小豆島にて」, ビデオインスタレーション, 2015
榎倉冴香, 「2015年 小豆島にて」, ビデオインスタレーション, 2015
桝田倫広〈穴の門〉
桝田倫広〈穴の門〉
榎倉省吾, 「牡丹」, 18x14cm, oil on canvas, 制作年不明
榎倉省吾, 「牡丹」, 18x14cm, oil on canvas, 制作年不明
地主麻衣子, 「ようこそ でていけ」13分, モニター・ヘッドフォン・椅子・木材, 2015
地主麻衣子, 「ようこそ でていけ」13分, モニター・ヘッドフォン・椅子・木材, 2015
高石晃「vtx」, 117x100cm, インク・ジェッソ・板・金具, 2015
高石晃「vtx」, 117x100cm, インク・ジェッソ・板・金具, 2015
榎倉冴香, 「穴 1」, 30x20cm, デジタルプリント, 2015
榎倉冴香, 「穴 1」, 30x20cm, デジタルプリント, 2015
高石晃, 「two rooms and staircase」, 140,120x210cm, ミクストメディア, 2015
高石晃, 「two rooms and staircase」, 140,120x210cm, ミクストメディア, 2015

「わたしの穴」  

 

わたしの家のお手洗いのドアにはブルース・ナウマンの「Body Pressure」のインストラクションが貼ってある。

ナウマンは「できる限り強く壁に体を押し付けてみろ」と言っている。

正直に言うと、もはやわたしは壁にリアリティを感じない。

目に見えて対峙できる壁などわたしの前にはない。

水の中にいるみたいに、皮膚は全方向から圧力を受けている。

わたしの体はすでに全包囲されている。

穴を掘ろうと思った。

 

穴はわたしが立っているこの場所にあけられている。

そこでは風も吹かない。

わたしの呼吸がよく聞こえる。

意識の下の方にはきっと同じような穴が続いている。

その場所へ少しだけ帰るのだ。

 

 

「美術の穴」

 

美術というフィールドにそびえる白い壁に、穴にいるわたしの姿を重ねてみる。

穴を掘り自ら作り出した壁に、もう一度自分の体を強く押し付けてみた。

壁の向こう側で、わたしを押し返す何ものかを、未だ想像出来ないのだろうか。

 

ホワイト・キューブは美学的制度というカギ括弧の中に、作品を挿入するひとつの仕組みである。しかしわたしの絵を支えているこの壁は、わたしと対峙する明確な理由を、実は示してはいない。制度的リアリティーの脆弱さは、わたしの表現とも同様に関わっている。

 

わたしが立っている大地に、シャベルを突き立てる。

ここでの大地というモチーフは、自らの出自や表現媒体に見立てられたものである。

掘るという行為は、表現することの原初的な発生段階と重なる。

わたしが依って立つ場所。

  

その場所を探索する試みである。

photo:Takuma Ishikawa